男性のロールモデルのご紹介

今回ご紹介するロールモデル

株式会社日本政策金融公庫 谷口さん
 多様な働き方実践企業である株式会社日本政策金融公庫(略称「日本公庫」、以下では略称を用います。)では、経営方針として「働きやすい職場づくり」を掲げ、女性の活躍推進・職場環境向上に取り組んでいます。
 ブロックで女性活躍を推進する委員会の委員長である谷口さんが、実は両親お二人を介護しながら仕事を続けた経験をお持ちとのこと。「介護についてはなかなか人に相談できずに一人で悩んでいる方も多いので、その体験談をお聞かせいただけないか。」とお願いしてみたところ快く了承していただきました。

coment_img



お仕事の内容と家族構成を教えてください。

sec_img01

 日本公庫は政策金融機関で、小企業・個人の方向け(国民生活事業)、農林水産業の方向け(農林水産事業)、中小企業の方向け(中小企業事業)へのご融資を主な業務としており、そのなかで私はさいたま支店長兼中小企業事業統轄というポジションにいます。
 支店長としては、支店全般の運営に責任を持つとともに、上記の3つの事業で知恵を出し合いながら、複数の事業での一体融資や事業を跨いだビジネスマッチングなどにより、地域活性化のための総合力発揮に取組んでいます。また、中小企業事業統轄としては、中小企業の方へのご融資をメインに、ご融資した資金を活かしていただくための金融機関の目から見たアドバイスや情報提供を行っています。ご融資にあたっては、経営者の方にお話をお伺いしたり、工場などの現場を拝見することが一番ですので、外に出ることも多いです。
 そして、もう1つ、北関東ブロック女性活躍推進地域委員会の委員長という顔を持っています。日本公庫では、女性が活躍できる職場環境づくりを進めており、各支店それぞれが独自の取組を行っていて、地域委員会はそのサポートをしています。女性が活躍できる環境づくりを進めることが男性も含めた皆が働きやすい職場づくりにつながると考え、日々頑張っています。
 家族については、現在は妻と二人暮らしです。妻は仕事をしていた時期もありましたが、私の転勤が多いこともあり、現在は専業主婦で、自営業の実家の家業の手伝いなどもしています。

 

ご両親の介護の経験についてお話をお聞かせください。

sec_img03

  私の両親はすでに他界していますが、両親の介護で7年ほど転勤先の住まいと実家を行ったり来たりの生活を経験しました。 
もともと3人兄弟の末っ子で両親の面倒も見なくていいということで、転勤族でもある今の職場に就職しました。しかし、兄と姉に先立たれて結果的に一人っ子になってしまい、三重県に住んでいる親の面倒を見ることになりました。私は、介護の期間だけでも5回転居をするような状況でしたので、父の体調が悪くなった平成15年の年末頃から、週末は新幹線や車で実家に帰るという生活が始まりました。
 当時は介護保険が始まったばかりということで、制度もそれほど浸透していなかった気がします。また、両親が2人とも存命の時は、他人に面倒を見られたくないという意識が強く、要介護認定の申請をしたがりませんでした。
 しかし、私は「介護をしても仕事は絶対に続けよう」と思っていましたので、介護保険などの制度については、両親の認定とは別にいろいろと調べました。地元の社会福祉協議会に行けばケアマネージャーの方に相談できることや介護計画を策定していただけることなども知り、早速お話を伺いに行ったりもしました。
 また、両親にはかかりつけのお医者様がいましたので、そのお医者様にも定期的にお会いするなどしてこちらの状況を伝えたり、両親の状況を伺ったりするようにしました。
 それから、暫く通いの介護を続けるなかで、妻とは話し合いをして、お互いに自分の親は自分が面倒を見ようということにしました。双方の親を他人扱いするつもりはありませんが、やはり認知症などの場合は自分の親でないと耐えきれないだろうと考えたからです。もちろん私の仕事の都合がつかない時などは妻にが実家に行ったりもしましたし、状況については常に情報共有することを心がけていました。
 さて、実際の介護ですが、最初は父から始まりました。ただし、父は足腰は弱くなっていたものの最期まで比較的しっかりしており、母もまだ元気でしたので、週に1回ペースで実家に帰ってはいたものの買い物などが主な仕事で、まだ気が楽でした。
 大変になったのは父が亡くなり、母が一人残された時からでした。
 自分の家に引き取ることも考えましたが、母は元々その土地の人間ではないのですが引っ越したくない様子でしたし、お医者様もあまり動かさない方がいいだろうとおっしゃっていたので、週末に実家に帰るという生活を続けることになりました。
 さすがに介護申請をしてほしいと本人を説得し、介護度を判定する方が来ると無理に元気に見せようとして困ることもありましたが、何とか認定をいただきました(介護度は、最初の要支援1から最後は要介護4までいきました。)。
 母はコミュニケーションが苦手でデイサービスは肌にあわないと考え、ヘルパーさんの訪問介護を主体にお願いしました。1年ほどして要介護2になってからは毎日1時間ヘルパーさんに来ていただくことで定点観測による見守りをお願いし、週末は自分が見るというパターンができ上がりました。
 私はその間も転勤続きで、大阪から奈良、東京、静岡と異動しましたが、仕事は絶対に辞めないと決めていたので、例えば東京にいた時は、毎週新幹線で実家に帰り、それでも間に合わないときは半休をもらって対応するなどして乗り切りました。
 最後の半年ほどはかかりつけのお医者様に紹介していただいた施設に入ることができ、何とか母親の介護を続けることができました。

 

仕事と介護を両立する上でのポイントは何でしょうか?

   まず仕事については、①辞めない、②社内には自分の状況をはっきりと説明する。③仕事をしている時は仕事に専念する(ONとOFFをはっきりさせる)ということだと思います。
 両親の介護が始まると、一人で悩んでしまって誰にも相談せずに仕事を辞めてしまう方も少なくないと聞きます。介護は先が見通せず、仕事と介護の両立は難しいと思ってしまいがちですが、現在は介護保険制度もありますし、企業の側でも介護休業などの制度も整ってきています。ぜひそういった制度も活用しながら乗り切っていただければと思います。
 それから社内にはきちんと自分の状況を説明することをお勧めします。仕事に限界を設けるつもりはないですが、急を要することも出てくると思います。私の場合、何より周囲に話をすることで自分の気持ちが楽になりました。
 また、介護と仕事を両立するためには、仕事をより効果的にこなす必要があります。私は、①自分の仕事の整理をきちんとする、②仕事の失敗をリカバリーする時間はないので、段取りをしっかりと考える、③突然自分がいなくなった時にも対応できるように、同僚や上司に自分の仕事の中身や進捗状況がわかるようにしておく、ということを心がけました。
 介護が始まる前に、介護保険の制度などについては勉強しておくことも役に立つと思います。私は自宅と実家が離れていたということもあり、両親がまだ何とかやっているうちから、地域の社会福祉協議会などに相談に行きました。介護が始まってからはバタバタの毎日ですので、その前に事前知識を持っておくとそれだけでも安心だと思います。
 介護が始まってからも社会福祉協議会には定期的に顔を出しました。私としては仕事を続けているために両親の面倒を週末しか見ることができないという負い目もあったのですが、ケアマネージャーの方などに、「よく頑張っていますね。」「仕事は絶対に辞めないでくださいね。」などと声をかけていただくことができ、元気をもらうことができました。
 ケアマネージャーの方、かかりつけのお医者様、ヘルパーさんや施設の方には、本当にお世話になりましたし、素晴らしい仕事をされていると今でも感謝しています。
 また、会社の上司、同僚にも支えてもらいありがたいと思っています。

 

子育てと仕事の両立と介護と仕事の両立は共通点も多そうですね。

 日本公庫では女性活躍を推進していますが、それは同時に職員皆の働きやすい職場環境づくりにもつながると認識しています。
 なぜ女性の活躍推進を行っているのかと言えば、「せっかく積み上げてきたキャリアを無駄にしないでほしい。辞めないでほしい。」ということからです。女性が活躍できる職場にするということは、ライフステージに応じた働き方ができるようにすることでもあります。
 介護も全く同じです。
 女性の活躍推進を進めていくと男性から不満が出てくることがあると聞きます。
 でもよく考えてみると、現在は少子化が進んでおり、男性も親の面倒を見ながら仕事をしなければならなくなることが多くなるのではないかと思います。女性の活躍推進は、男性が働きやすい職場づくりにもつながるということを考えれば不満もなくなるのではないでしょうか。

 

最後に子育てや介護と仕事を両立されている方々にメッセージをお願いします。

sec_img02

  個人的には仕事を辞めるというのは最後の選択肢にして欲しいと思います。 やりたいことがあったりキャリアアップのために辞めるのなら、それは素晴らしいことと言えるかもしれませんが、それ以外のことで辞めるのだとしたらもったいないことです。
 私は、辞める前に続けられる道を一緒に考えることができればと考えます。 社員は意外と自分の会社の制度を知らないものです。まずは人事や総務担当の方などに状況を伝え、辞める選択肢は最後にして、続けられる道を考えてみてはいかがでしょうか。
 ただし、仕事が続けられる道が見つかったら、今度はその制度に甘えることなく会社の時間はしっかりと会社のために働いて欲しいと思います。妊娠中の方などには無理はお願いできませんが、時間がない中で頑張ったことは絶対に今後につながるはずです。
 また、子育て中の女性は、長期間育休でお休みをしていると心配になることもあると思いますが、仕事をしていたら人生の中でこれほど長期に休める機会はあまりないので、しっかりと社会人や母として違う目を養っていただければと思います。その経験が復帰した時の仕事に生きるのではないでしょうか。
 そして、介護に直面された場合も、私は絶対に仕事は続けた方がいいと思います。
 その時は大変かもしれませんが、親が亡くなった時に、すべてを失うことにもなりかねません。どうか気になさらずに自身の状況を会社に相談してみることをお勧めします。
 ワークライフバランスはお互い様で成り立っています。人は皆、時々によってワークライフバランスのバランスが変わりますが、トータルで考えれば皆バランスは同じくらいになる可能性が高いのではないでしょうか。
 たまたま自分がワーク重視の時もあるかもしれませんが、それはライフに余裕があるということ。自身の介護経験を通じて人生そんな時ばかりではないと感じるようになりましたし、ライフに余裕があるときはワークを一層頑張れるようになったように思います。
 私の経験が皆さんの何かのお役に立てば幸いです。そして、皆さんには、女性の活躍推進が誰もが働きやすい環境づくりにつながっているんだということを認識していただけたらうれしいです。

会社紹介

株式会社日本政策金融公庫 さいたま支店

所在地
〒330-0802 埼玉県さいたま市大宮区宮町1-109-1 大宮宮町ビル
社員数
130名(男性90名、女性40名)
業種
金融業、保険業
事業内容
政策金融機関
URL
https://www.jfc.go.jp/

このページの上へ

株式会社日本政策金融公庫<br>谷口さん

  • 男性ロールモデルのご紹介
  • 男性の育児休業取得に積極的に取り組む企業
  • 男性の働き方見直し倶楽部
  • 多様な働き方実践企業
  • 埼玉県
  • 女性キャリアセンター