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今回ご紹介するロールモデル

第1回 伊藤麻美さん いとうまみ
日本電鍍工業株式会社
代表取締役
ラジオのパーソナリティーからメッキ会社の社長になられた伊藤さん。小学生の頃、病気になった母から”花嫁修業”を受けていた伊藤さんは、まさか自分が父の後を継いで社長になるとは想像していなかったそうです。1991年に創業者である父親が亡くなった後、業績が低迷していた会社の社長就任後、3年で黒字化。その後、結婚、出産し、現在は社長をしながら子育て真っ最中。

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プロフィール

1967年生まれ

1990年上智大学外国語学部を卒業後、洋楽漬けの日々を夢見てFMラジオのパーソナリティーに就く。

30歳でジュエラーを目指して1998年に米国カルフォルニアに留学する。世界的に有名な宝石の学校GIA(Gemological Institute of America)で宝石の鑑定士・鑑別士の資格を取得。

2000年3月に日本電鍍工業の代表取締役に就任、現在に至る。1児の母(7歳の男の子)。

 

社長に就任されたときの会社の状況は・・・?

 ariticle_ito_img02当社は、腕時計関連のメッキが売り上げの約9割を占めていましたが、バブル期以後、日本のメーカーは海外に生産拠点を移しており、国内でメッキや加工の仕事はどんどん減っていました。しかし、父の後を継いだ前社長は、現状維持のまま赤字が出ていても営業転換せず、設備更新や新工場を建設するなど資産を切り売りしながらの放漫経営でした。私の社長就任時は10億円を超える負債を抱えていました。

 

 

 

業績回復のためのポイントは・・・?

 売り先を確保することが必要ですが、当社は、時計以外では無名であることに気付かされました。時代はITだったので、携帯電話やパソコンなどに携わるメッキ関連の企業は多くありました。しかし、当社は手作業のメッキを行うので設備的にも無理でした。そこで、人員、環境、設備など今ある状況下で業績を回復させるためにはどうするかと考えたときに、それは少量多品種ではないかと考えました。そして、これから経済が悪化しても生き残れる分野は何かと女性である自分に置き換えたときに医療、健康、美容ではないかと思い、そういった分野に営業を広げていきました。

 展示会では、ブースの出展費用はないため、営業するために私自身が出かけました。23区内で行われている小さな商談会まで顔を出しました。また、当時は中小企業の製造業では珍しかったと思いますが、社員と共同制作でホームページを立ち上げました。このようにして間口を広げていく中で、いろいろな人に出会う中で当社の強み弱みをはっきりと見極められるようになりました。どのような仕事を取れば、付加価値があるかということがわかってきました。

 

人件費を削るというリストラをしなかったのは・・・?

 前社長時代にすでに一度実施されていました。人員削減は何度も行うと社員が疑心暗鬼になり足の引っ張り合いになってしまい、社員の士気が下がります。税理士の先生からも、人員削減は苦肉の策だと言われていました。それならば、今の人員でしっかりと協力し合った方が、がんばってくれるのではないかと思いました。

 

多様な働き方実践企業でプラチナ企業となっている日本電鍍工業。働きやすい職場づくりのために社長が心がけていること。

  社員の意見を汲み取るように心がけています。毎日、社員ひとりひとりにあいさつをするようにしたり、社長室をなくして社員と同じフロアで執務しています。

  ariticle_ito_img03また、毎年1回、全社員と面談しています。社長が全社員というのは珍しいのではないかと思います。面談の目的は、会社の方向性や問題意識を確認し共有することと、社員の不平不満やトラブルを抱えている話を聞くことです。中小企業にとって、社長は経営者ではありますが、社員にとってコンサルであったり、カウンセラーであり、母親であり姉であるというようにいろいろな顔を持つ必要があると思っています。上に立つ者が、社員の心の状態を含めて管理しないといい仕事ができないと思います。

  3年ほど前から会社の創立記念日に合わせて、年度初めのプレゼン大会を行っています。各部門ごとに行動目標を発表し、それぞれの発表に対して、みんなで自由に意見を言い合います。一人ひとりの社員が経営に参画しているという意識を持ってもらいたいと思っています。以前は、経営目標を私が説明していただけでした。私が一番やりたくないことは、強制的に人を動かすことです。指示してやらせることは早いですが、その人の心がついていなければいい結果がでないと思います。

 また、以前は、女性は全員パートでしたが、正社員にしました。女性だからパートというのはおかしいと思いますし、正社員になれば女性もやる気が出てくると思います。

 私は、社員には「会社はチーム」と言っています。バスケットボールで例えれば、シュートをするフォワードだけで仕事はできません。ドリブラーなどボールを運ぶ人も必要です。スポーツも仕事もリレーで、どこのポジションが欠けても困ります。

 社員の意識が「あれは○○の仕事だから」とか足の引っ張り合いになるような組織にしたくないし、1人が目立つようではいけないと思います。危機感も喜びも全員で分かち合えるようにしていきたいと思っています。

 

子どもを出産して変ったことは・・・?

ariticle_ito_img01 子どもができて寛大になりました。女性は、仕事でもそうですが、「こうでなくてはいけない」というような少し潔癖なところ、完璧主義的なところがあると思います。でも、それを子どもに当てはめることはできません。食事のときにパンくずを落としたり、意味もなく泣いたりします。でも、今は他人の子どもが泣いていても、「子どもは泣くのが仕事だからね。」と思うようになりましたし、落としたパンを子どもに食べさせても気にならなくなりました。

 仕事でも、これまでなら「こんなこと許せない。」と思っていたことが「これもいい勉強だよ。」と思うようになりました。失敗に対して、もちろん対策は必要ですが、怒っても仕方がありません。物事を前向きにとらえられるようになったし、昔から知っている人には丸くなったと言われます。死ぬか生きるかという問題であれば深刻ですが、そうじゃなければ何とかなります。当社のスローガンは「なせばなる」がモットーです。

 

日本の女性に対する思い

 日本はまだまだ男尊女卑的な部分が残っていて、年齢が上の男性ほどそう感じます。これは根強いもので急には変わらないと思います。女性=専業主婦というイメージがまだまだあります。私が結婚するとき、ある男性の経営者からも「伊藤さん、結婚するんだ。会社と結婚したんだと思ったよ。二兎追うものは一兎も得られないよ。」と言われました。このような意識の経営者がまだまだ多いです。男性も女性も同じ生き物で、男性は、社長で結婚していても普通なのに、女性が社長だと結婚してはいけないのでしょうか。女性が結婚すると二兎を追っていると思われるのはおかしいと思います。人生は一本道で、仕事があったり、結婚があったり、子育てがあったりするものです。私は、そういうことを言われると燃えるタイプなので、「今に見てろ。会社もよくして、子どもも立派に育てて見せよう。」と思いました。

 ただ、現実には、仕事と子育てで挫折してしまう女性はたくさんいます。私が協力しているイーウーマンの活動で、国際女性ビジネス会議というのがあります。そこでも、仕事と子育ての両立、起業することは女性としての人生を捨てることになるのか等と悩む女性を見てきました。私は社長になって、結婚して出産したけど、それでも両立できています。それをわかってもらえれば、悩んでいる女性たちが自分にもできるのではないかと感じて前向きになってくれたり、同じ問題を抱えている人たちが同じ悩みを共有することで、よりよい環境づくりのための行動につながっていくのではないか、そう考えています。

 まだまだ周囲の雰囲気が整っていないために一歩を踏み出すことに躊躇する女性がたくさんいます。私はそういう女性に火をつけたい、そのきっかけづくりができればいいと思っています。

 

伊藤社長からのメッセージ、ウーマノミクスプロジェクトへの助言

 ariticle_ito_img04現在の日本のルールのほとんどは、男性が作っています。ですから、女性の考えとかみ合わないことが多くあります。3年の育児休業とか女性手帳とかの議論がありましたが、あのような考えはやはり男性目線になっているように思います。

 もっともっと女性がいろいろな分野に参画できるようにしてほしい。才能のある女性はたくさんいるので、チャンスを与えてほしいと思います。

 だからといって、例えば、「取締役の3割を女性に」みたいなことをしてしまうと、女性だからという理由だけで取締役になってしまうかも知れません。逆差別にもなってしまうし、本当に優秀な女性までも「女性だから、取締役になれた」と見られてしまいます。

 将来、「女性」というくくりを外せるようになるといいですね。「女性車両」だとか「女性経営者」とか。私は経営者ですが、経営者として男性も女性も変わらないと思います。私は、全てが男女は平等ということはあり得ないと思います。肉体的な違いがありますし、出産のように女性にしかできないこともありますから。ただ、女性が普通に活躍できる環境をつくっていきたい。そうすれば、「女性○○」という言葉がないのが自然な社会になると思います。

 「男性だから元気がない。」とか「女性だから○○だ」というような見方はどうかと思います。女性自身もそういう見方をしないことが大事です。「女性だから」と言われてしまうと、女性が女性を意識しなくなり、活躍している女性が男性化してしまいますし、それは残念なことです。女性ならではの可憐さやかわいらしさは大切にしてほしいと思います。

会社紹介

日本電鍍工業株式会社

所在地
〒331-0823 埼玉県さいたま市北区日進町1-137
社員数
68名(男性45名、女性23名)
業種
金属製品製造業
事業内容
電気メッキ加工、無電解メッキ加工、イオンプレーティングなど
URL
http://www.nihondento.com/

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